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労働者派遣事業の許可要件とは

労働者派遣事業の許可要件とは?

4つの基準と申請前の確認ポイント

   労働者派遣事業を始めるには、厚生労働大臣の許可が必要です。 許可を受けるには、資産や事務所を用意するだけでなく、派遣労働者を適切に雇用・育成する体制や、個人情報を守る仕組みを整えなければなりません。事業主や役員などが法令上の欠格事由に該当しないことも必要です。これらの基準を満たすと認められて、初めて許可を受けられます。

許可基準は、大きく分けると次の4つです。

許可基準 審査で確認される主な内容
① 専ら派遣を目的としないこと 特定の相手だけへの派遣を目的に事業を営んでいないか
② 適正な雇用管理ができること 派遣元責任者や教育訓練などの体制があるか
③ 個人情報を適正に管理できること 登録者・派遣労働者の情報や秘密を守れるか
④ 事業を的確に遂行できること 財産、組織、事務所、運営方法が基準に合うか

 重要なのは、4つのうち一部を満たせばよいわけではないという点です。例えば、十分な資金があっても派遣元責任者を適切に配置できなければ、許可取得は難しくなります。それぞれの要件について、申請前に確認しておきましょう。

 

1.特定の相手だけに派遣する「専ら派遣」を目的としないこと

 労働者派遣事業は、専ら特定の者に労働者派遣を提供することを目的として営むものであってはなりません。例えば、グループ会社1社だけに人を派遣するために事業を立ち上げ、ほかの派遣先にサービスを提供する意思がない場合は、専ら派遣に該当する可能性があります。

 ここで確認されるのは、単に「申請時点で取引先が何社あるか」だけではありません。誰に、どのようなサービスを提供する事業なのかという事業の目的や運営方針が重要です。開業時点で派遣先候補が少ない場合でも、特定の相手だけを対象とする事業計画になっていないかを確認する必要があります。

 「まずは取引のある1社から始めたい」と考える場合は、その後の営業方針や派遣先の開拓方法も具体的に整理しておきましょう。なお、雇用機会の確保が特に困難な労働者の雇用継続を図る場合など、法令に定める例外があります。

 

2.派遣労働者を適切に雇用・育成できること

 派遣労働者が実際に働く場所は派遣先ですが、雇用主は派遣元です。派遣元には、賃金の支払い、労働保険・社会保険への適切な対応、就業上の相談や苦情への対応など、雇用主としての役割があります。派遣先に人を送り出す仕組みだけでなく、派遣後も労働者を支えられる雇用管理体制が必要です。

 

派遣元責任者を適切に選任する

 派遣元責任者は、派遣労働者の就業に関する連絡調整や苦情への対応など、派遣元の実務を担う重要な役割です。事業所ごとに選任する必要があり、講習の受講も要件の一つです。

 選任に当たっては、欠格事由に該当しないことに加え、雇用管理などに関する一定の実務経験があること、申請受理日前3年以内に派遣元責任者講習を受けていることなどを確認します。責任者が不在となる場合に備え、臨時の職務代行者もあらかじめ選任しておきます。名義だけを借りて責任者を置くことは認められません。実際に業務を担える人を、適切な形で配置することが必要です。

 

教育訓練とキャリア形成支援を計画する

 派遣元は、派遣労働者が経験を積み能力を高められるよう、段階的・体系的な教育訓練やキャリア形成支援の制度を整える必要があります。

 例えば、入職時に必要な知識を学ぶ研修、経験年数や担当業務に応じた研修、将来の働き方について相談できる窓口などです。申請時には「研修を実施する」と書くだけでなく、対象者、内容、実施時期、担当者、費用負担などを具体化し、実行できる計画にしておかなければなりません。

 制度が書面上だけのものにならないよう、誰が研修を管理し、派遣中の労働者へどう案内するかまで考えておくことが大切です。

 

3.個人情報と業務上の秘密を守れること

 派遣会社は、応募者や登録者の氏名、連絡先、職歴、希望条件など、多くの個人情報を扱います。派遣労働者の情報を派遣先とやり取りする場面もあるため、情報の取得から保管、利用、廃棄まで、適正に管理できる体制が必要です。

 具体的には、個人情報を扱う担当者と利用目的を明確にし、閲覧できる人を業務上必要な範囲に限ります。紙の書類をどこに保管するか、電子データへのアクセスをどう管理するか、保存が不要になった情報をどう廃棄するかも決めておきましょう。本人からの問い合わせや苦情に対応する手順、従業員への教育も重要です。

 個人情報保護に関する規程を作ることと、実際に情報を守れることは別の話です。 申請前には、登録面談から派遣先への情報提供まで、実務の流れに沿って管理方法を確認してください。

 

4.事業を的確に遂行できること

 4つ目の基準には、財産、組織、事務所、事業運営に関する要件が含まれます。特に資産要件は数値で確認できるため目を向けやすい部分ですが、それだけを満たせばよいわけではありません。

 

財産的基礎:3つの数値をそれぞれ確認する

一般的な許可基準では、次の3つをすべて満たす必要があります。

確認項目 原則となる基準
基準資産額 2,000万円 × 派遣事業所数以上
負債総額との関係 基準資産額が負債総額の7分の1以上
自己名義の現金・預金 1,500万円 × 派遣事業所数以上

 基準資産額は、原則として「資産総額から繰延資産と営業権〔のれん〕を除き、さらに負債総額を差し引いた額」です。

 ここで注意したいのは、「資本金が2,000万円ある」ことと「基準資産額が2,000万円ある」ことは同じではないという点です。設備投資や事業上の損失、借入金などの状況によって、基準資産額は変わります。また、預金残高を増やすために借入れをしても、同時に負債が増えるため、ほかの基準も含めて確認しなければなりません。

 複数の事業所で派遣事業を行う場合は、事業所数に応じて必要額が増えます。申請を決めてから不足に気付くことのないよう、決算書や預金の状況を早い段階で確認しましょう。適用される基準や特例の有無は、申請内容に応じた確認が必要です。

 

組織的基礎:責任の所在を明確にする

 派遣事業の運営には、応募者の登録、雇用契約、派遣先との調整、就業状況の把握、苦情への対応など、複数の業務が伴います。誰が何を判断し、問題が起きたときに誰へ報告するのか、指揮命令の系統が明確でなければなりません。

 特に登録制を採用する場合、登録者数に対して業務を担う人員が不足していないかも確認されます。事業計画では、売上や派遣人数だけでなく、それを支える社内の担当者と業務分担まで考える必要があります。

 

事務所:面積だけでなく、業務への適性を見る

 事務所は、位置や設備などから見て、派遣事業を行うのに適切であることが求められます。事業に使用できる面積は、おおむね20平方メートル以上が基準です。ただし、面積の数字だけで物件を判断することはできません。

 登録面談や相談を行えるか、書類やデータを適切に管理できるか、派遣元責任者を含む担当者が業務を行えるかなど、実際の使い方を踏まえて確認しましょう。物件を契約した後で要件に合わないことが分かると、事務所の変更が必要になる可能性があります。

 

事業運営:法の趣旨に沿っていること

 派遣事業を、別の組織の会員獲得や宣伝の手段として利用すること、登録者から名目を変えて手数料に相当するものを徴収すること、他人に自社の名義で派遣事業を行わせることなどは認められません。

 許可申請では、「要件を満たす書類をそろえる」だけでなく、許可後にどのような方法で事業を続けるかも問われます。契約、登録、雇用管理、相談対応まで、日常業務を適正に行える仕組みを整えておくことが重要です。

 

申請前によくある疑問

Q.資本金が2,000万円あれば許可を受けられますか?

 資本金だけでは判断できません。基準資産額、負債総額との関係、自己名義の現金・預金という3つの財産要件に加え、人員や事務所など、ほかの許可基準も確認する必要があります。

Q.事務所が20平方メートルあれば十分ですか?
 面積は判断項目の一つです。所在地や設備、個人情報の管理、業務を行うための配置も含めて確認されます。

Q.許可を取った後は、そのまま事業を続けられますか?
 許可には有効期間があり、継続して事業を行うには更新が必要です。また、事業報告など、許可後に行う手続きもあります。許可取得をゴールとせず、その後の運営まで見据えて準備しましょう。

 

許可準備は「数字・人・場所・運営」の順に点検する

 申請を検討し始めたら、まず財務資料で資産要件を確認します。次に、派遣元責任者の経験や講習受講状況を確かめ、教育訓練計画と個人情報の管理体制を整えます。そのうえで、事務所の条件と事業全体の運営方法を点検すると、準備すべき事項が見えやすくなります。

 労働者派遣事業の許可要件は、派遣労働者が安心して働ける事業を継続できるかを確かめるための基準です。申請に当たっては、最新の厚生労働省の業務取扱要領と、申請先となる都道府県労働局の案内を確認してください。

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